まおゆう(4)

まおゆう魔王勇者 4この手でできること

魔王「――ファンダメンタルズ、最適化、パレート
 ――債権、内需、所得、産業、成長率、空洞化」

魔王「興味は尽きないな。これはおそらく、価値観か」

魔王「名前、が本体なのだろうな。
 概念に名前――名詞をつけることによって、
 新しい価値観が発見/創造される。

  この場合発見と創造は同じ行為で、その瞬間に世界が
 拡張される。
 新しい視座を得て、今までの全ての事象は再評価されるわけだ。

  つまり、視座の数は、世界に対する係数。
 視座を多く持つほどに多くの世界を見ることが叶う。
 それが知識の、学習の意味。
 我が一族の、存在意義。

  我らは概念に名前をつける。
 新しい概念で世界を拡張する。
 概念と概念は時に出会い、融合して、生み出した我々にも
 思いつかなかったような変化を遂げることがある。

  それは、我らが手にする実り。
 世界の、果実。
 理論面においてはl=n(n−1)/2を取るのかな。

  素晴らしいな。……知ることは素晴らしい。
 けれど、それ以上にこの世界は素晴らしいな。
 この世界には、この世界を加速度的に拡張する存在が
 沢山いるんだ。
 それは魔族だけじゃなくて……」

魔王「……“魂持つ者”」

魔王「そう呼べたら素敵だな。
 あの向こうには、どれほど豊かな世界が広がっているんだろう?
 二つの世界が出会ったら、どれだけの組み合わせ爆発が
 起こるんだろう? 概念と概念が融合し、どんなに
 素晴らしい世界を見せてくれるんだろう?」

魔王「人間、世界か……。
 ただの魔物の一匹であるわたしには、触れ得ないだろうけれど。
 城ってどんなものなんだろうな。
 村って云うのは、魔族のそれといっしょなのかな。
 なかなかにもどかしいな。
 映像資料がもうちょっと充実してればよいのだろうが……」

魔王「我らも、物も、貨幣も流れる。
 決して留まりたるを知らない。
 時も流れる。
 でも、現われたものは、けして消えない。
 消えたかに見えて、必ずや残る。
 この瀬良の図書館のように。

 いくつも、いくつも、数千数億の世界の記録が
 歌っているのが聞こえる。
 何でみんなには聞こえないのかな?」

魔王「こんなにも見つけて欲しいと
 誇らしげに、高らかに、歌っているのに。
 わたしの想いも、
 やはり誰にも……届かないのかな」

魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」4
http://maouyusya2828.web.fc2.com/matome04.html

※今読み返してて、「キュレーションの時代」と話している内容が
 似ているなあとなんとく思いました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4480065911