使命に生きる。身をとして事業に生きる/天地明察

天地明察

天地明察』を今更ですが読了しました。筆者の冲方丁は自分にとってはジュブナイルSF(またはラノベ作家)で、『マルドゥック・スクランブル』『オイレンシュピゲール』等のダークな近未来世界で展開される秘密部隊同士の抗争がすごく好きだったんですが、本書はすごく読みやすい文体(今までは凄く癖のある文体で有名でした)のハードカバー小説で「こういうのも書けるんだ!」的な驚きがありました。

内容ですが、江戸時代前期を舞台に算学や碁・天文学の関係者、そして江戸幕府の要人達が織り成す群像劇で、話の起承転結もしっかりしてて最後まで楽しく読めました。背景知識として述べられてる色々な事が勉強になりました。神道に対する解釈とか、陰陽師はもともと暦を司っていた専門職であるとか、関孝和和算を発展させる過程で独学のみで代数や行列に至ったことetc・・・。

後、ここ2ヶ月くらいずっと読んでる『風雲児たち』という江戸時代の通史的な漫画の中に出てくる登場人物と重なる要人が何人かいて、それぞれの人物(特に徳川光圀!)の評価が割りと違ってて、興味深かったです。

風雲児たち (1) (SPコミックス)

作中で一貫して語られる、渋川晴海の人生−算学に衝撃を受け恋焦がれ、やがて同好の士を見つけ次々と倒れていく彼らの意思を受け継ぎ、国家的な大事業に「定石」を重ねて勝負していきやがて・・−が一環して彼の心象風景として描かれていて、そのためか最後の最後まで重くない、爽やかで儚い人生の夢を見ているような読後感が印象的な作品でした。次は『光圀伝』にチャレンジしたいと思います。

※後、放置中の『テスタメントシュピーゲル』の続編もずっと待ってます・・・。