ベイビーステップ 7 勝木光 過去を学ぶことで現代を相対化する/テニスにおける強さの多様性



ベイビーステップ 7 (少年マガジンコミックス) - 勝木 光

【丸尾独白】

難波江君は俺をどう分析してるんだろう
俺は良くも悪くも基本に忠実・・・
得手も不得手も特にない

(中略)

【難波江独白】

丸尾君の型はあくまで
今 基本と呼ばれている
型にすぎない

時とともに
無数にある
基本型の1パターン

例えば
この基本のフォアは
スタンスがクローズド

ストレート球を
クロスに返すより
クロス球をストレートに
返す方が
物理的に難しくなる

基本は万能じゃない・・・・
忠実だからこそ
浮き彫りになる
弱点もある


6巻から登場してくる、難波江君ですがプレイスタイルもすごく面白いんですが、本当に魅力的なのは試合中の独白で語るテニス哲学だったりします。

7巻の半分以上を費やして描かれる、丸尾VS難波江戦ですが、それまで徹底的な情報収集を重ねることで相手の強み・弱みを丸裸にし、弱みを徹底的に突く事で勝利を重ねてきた丸尾が、同じスタイル(流派?)を自身よりも遙かに高いレベルで完成させている難波江にぼっこぼこにされるというのが一つの醍醐味です。

この時点での、丸尾と難波江の実力の差はどこに起因するものなのか?難波江君が丸尾君よりも遙かに優れているのはどこなのか??というのが明らかにされるのが冒頭の独白シーンです。

丸尾の「基本スタイル」に対して、丸尾自身は「良くも悪くも基本に忠実」というイメージを持っていますが、基本形のどこが良くてどこが悪いのか?というより具体的なレベルまで考えが到達していません。そこで思考が止まってしまっています。

対して、難波江は「現代において基本とされている型」テニスの長い歴史の中で生まれてきて多数スタイルの中の1スタイルでしかなく、そこには利点(強み)と欠点(弱み)があることを具体的に理解していてその弱点を徹底的に突くことで丸尾を追い込んでいきます。

(※この事から、難波江は現代テニスだけじゃなくて、昔のテニスの古典的な型や戦法をきちんと勉強していて、そういった過去のスタイルを現代のスタイルを比較することで、現代テニスを相対化して(何かと比較して)分析し、自身のテニス理論を発展させた事が伺えます。しかも、理論だけじゃなくきちんと実践し成果を出している!すげーっすね。)

この時点で、「自身と相手の強みと弱みを理解し、自身の強みを徹底的に活かし、相手の弱みに徹底的につけ込む」というスタイルにおいて難波江は丸尾よりも遙か先を行っています。

二入の戦い方を見てると、自身の現状を把握し戦略的に動くという事が具体的にどういう事なのかものすごく腑に落ちます。すげーよ、この漫画!!

この難波江の登場により、作品内における「テニスにおける強さとは何か?」という問いの視野というか射程がずっと広くなったのがわかるでしょうか?

池やタクマなどの「とにかく身体能力が高い。圧倒的に強い」プレーヤー以外にも、全く別の路線でここまで強くなれる選手がいるんだ!みたいな事を示した点で難波江の存在は大きいと思います。いやー、すごい面白い!!続きが楽しみだ。。。