『花とアリス』岩井俊二監督 かけがえのない時間の美しさを描く



花とアリス 特別版 [DVD] - 岩井俊二

少女達の思春期の微妙な心情を描いた、岩井俊二の青春ドラマ。


憧れの先輩宮本(郭智博)の気を引こうと一生懸命の花(鈴木杏)。ある日、ちょっとした嘘で宮本を騙し2人は付き合う事に。しかし、花の嘘にどこか半信半疑な宮本。嘘に気づかれないよう必死な花は親友のアリス(蒼井優)を巻き込むが、宮本は花の想いとは裏腹にアリスに惹かれていく。段々とぎくしゃくし始める花とアリスの友情。そして花の恋の行方は・・・。


休日の喫茶店、早朝で人のまばらな列車。冬の海、空にたなびくトランプ。色とりどりの花々にかこまれた花の家。レトロな雑貨にかこまれたアリスの家。木製の床板が年季を感じさせる、バレエの稽古場、そこに差し込む太陽の光。ひたすらにきれいな世界。監督が何を好きなのかよく伝わってくる。


印象に残るのは物語の終盤、アリスがバレエを踊るシーン。控えめなBGMのみの舞台の中で蒼井優が静かに舞う。わずか5分足らずのシーンの中に沢山の言葉にならない気持ちや想いが込もる。綺麗な時間。情感が伝わってくる。


また、アリスが父と話すシーンが良い。素っ気ない表情とは裏腹に本当に父を求めているのは娘の心情。両親への「ウォーアイニー」という気持ちが届かない諦めを感じつつも、求めてしまう気持ちがもどかしい。


大切だったあの時間も、そして気持ちもいつか消えてなくなってしまう。だからこそ、かけがえのない時間は美しい。美しい映像の中に微妙な心情が揺れ動く少女2人の友情物語。おすすめです。