具体→抽象はできても、抽象→具体は難しい



みる わかる 伝える - 畑村 洋太郎


失敗学の畑村洋太郎さんの「みるわかる伝える」という本を読んでたら、おっと思った場面があったのでメモ。

具象の世界で実行する全体計画というのは、このように抽象の世界の知見だけでは決して作ることができない。それは具象の世界には必ず制約があるからだ。これをクリアするためには、計画を作る人が具象の世界についても精通していなければならないのである。


当たり前の話のようだけど、ロジカルシンキング的な考え方は、こういう落とし穴に嵌りやすいように思われる。具象=実務、抽象=ビジネス本で得られる知見と言い換えると、すんなり落ちてくる。

いまの話は、イカとスルメの関係に似ている。イカの水分(属性)をそぎ落とせばスルメにすることができる。ところが逆にスルメ(抽象)にいくら水分を加えてもイカ(具象)にすることはできない。


昨日、仕事で分譲マンションの棟内の電気配線図を見ながら、実際の配線を確認していくという作業を見学させてもらったのだけどその時に似たような事を思った。


棟内の電気配線図を通して、全体のシステムデザインを見ることができて、それが全体性を獲得する(鳥瞰図を眺める)際には、ものすごく役に立つ。


しかし、実際の配線がその設計図の通りになってるかというとなっていない。スペースが無かったり、他の配線とぶつかったりともろもろの制約の中で違う構成になっていることが少なくない。


つまり、回線図≒現場である。また、図面より実際の現場の方が情報量もずっと多い。


では、抽象化・モデル化に意味は無いのだろうか?


そんなことはない。要するに、全体のざっくりとしたイメージを図面で獲得する、そして現場で現物を見て、実際の情報を獲得していく。この2つの行為の平行して行っていくことが必要なんだ。そして、それが抽象と具体を行き来するということなんだ。


そんなことを思ったこの頃。